急成長を続けるアメリカのMLS
MLS(メジャーリーグサッカー)は、アメリカとカナダを中心に運営されるプロサッカーリーグで、1996年に設立されました。このリーグはFIFAワールドカップ1994年の成功を受け、北米地域でのサッカー普及を目的として誕生しました。
設立当初は10チームでスタートしましたが、現在では30近いクラブが所属しており、北米を代表するスポーツリーグの一つとして地位を確立しています。
MLSの特徴の一つは、アメリカ特有の「フランチャイズ制」を採用している点です。この制度では、各クラブが独立した運営体制を持つ一方、リーグ全体が収益や選手管理を共有する仕組みを取っています。
また、他国のサッカーリーグとは異なり、MLSには昇降格制度が存在しません。この点が議論を呼ぶ一方で、安定的な運営と新規参入クラブの促進に寄与しています。
さらに、MLSは「指定選手制度(デザインネイテッドプレーヤールール)」を導入しており、これによりクラブはリーグのサラリーキャップ(年俸総額制限)を超えて高額な選手を獲得できる仕組みがあります。
この制度を活用し、かつてデビッド・ベッカムやティエリ・アンリ、ズラタン・イブラヒモビッチといった世界的スター選手がMLSに参加し、リーグの知名度を大きく向上させました。
一昔前のアメリカでは、サッカーは「不毛の地」と称されるほど人気が低いスポーツとされていました。アメリカのスポーツ文化は、アメリカンフットボール、バスケットボール、野球などが圧倒的な支持を集めており、サッカーはマイナーな存在でした。
その理由の一つは、これらのスポーツがアメリカ独自のルールや伝統に基づいて発展し、国内市場で完結している点にあります。サッカーの国際性は、当時のアメリカのスポーツファンにとって馴染みが薄かったのです。
さらに、サッカーを楽しむためのインフラも不足していました。プロリーグであるNASL(北米サッカーリーグ)が1970年代に一時的な人気を集めたものの、経済的な問題や運営の失敗により1984年に解散。
その後、アメリカにはサッカーを楽しめるプロリーグが存在しない期間が続きました。この歴史的背景が、MLS設立当初の苦戦を物語っています。
ただし、サッカーが完全に無視されていたわけではありません。移民コミュニティや大学スポーツではサッカーが根付いており、若年層の間ではポピュラーなスポーツでした。この潜在的な人気が、やがてMLSの発展とともに開花するきっかけとなります。